iYell株式会社

「お客様のためになるCS組織」をつくったら、ローン相談件数154%・事前審査提出数312%に到達。iYell株式会社のカスタマーサクセス組織変革

「お客様のためになるCS組織」をつくったら、ローン相談件数154%・事前審査提出数312%に到達。iYell株式会社のカスタマーサクセス組織変革
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「CSちゃんとやらなきゃね」——iYell株式会社は、この議論に過去数回ぶつかってきました。

住宅ローン業務支援のSaaSを不動産会社に提供する同社は、契約社数こそ伸びていました。ですが収益の本丸であるローン相談件数が比例せず、緊急度の高い営業案件に毎回引き戻されてきました。CSを「お客様を理想状態に導く活動」へ再定義した結果、モデル人材A担当法人で相談件数が前月比154%、事前審査提出数が前月比312%(いずれも1ヶ月の変化)に到達しました。温かい文化を壊さず水準を上げた半年です。

iYell株式会社は、「応援し合う地球」をビジョンに掲げ、不動産会社向けに住宅ローン業務支援サービス「いえーる ダンドリ」を提供する企業です。不動産会社の店舗から、住宅購入者のローン相談を引き受け、金融サービス仲介業者として、最適な金融機関の提案から融資が行われるまでの一連の工程をワンストップで支援しています。

「CSは定義できる。CSは科学できる」と語るまでの構造変化について、同社ダンドリ戦略開発本部 本部長 石川様にお話を伺いました。


導入の理由:数回ぶつかってきた議論

――事業におけるCS組織の位置づけを教えてください。

石川様: 当社は「応援し合う地球」をビジョンに、不動産会社向け住宅ローン業務支援のSaaSを提供しています。収益はSaaS利用料と、店舗のローン相談を金融機関へつなぐ紹介手数料の二本です。後者が成長エンジンで、相談件数の純増がトップラインを決めます。

――ご相談前のCSはどのような状態でしたか。

石川様: 当時の同社は、住宅・不動産業界にプラットフォームをできるだけ広く行き渡らせることを最優先していました。その戦略のとおり、契約社数は先行して伸びていきます。

一方で、契約企業からの相談件数を伸ばすCS活動は、戦略的に次のフェーズに位置づけられていました。ここに、まだ手をつけられていない余地が眠っていたのです。

そもそも、契約は本社と結びますが、相談の発信元は各地の店舗にいる営業担当者です。そのため、現場がiYellの存在を知らないケースが多く、契約が「実際の相談」につながる最後の一歩が届いていませんでした。受け手であるCSも、お問い合わせ対応で手一杯。営業経験者がほぼおらず、どの相談を優先すべきかの基準もない状態でした。

契約という入り口は広がっていた。けれど、それを相談という成果に変える仕組みは、まだ立ち上がっていなかったのです。

――以前から課題認識はあったのでしょうか。

石川様: 「CSちゃんとやらなきゃね」という議論に数回転ぐらいぶつかってきています。重要度は高いのですが、緊急案件が出るとそちらが優先されます。アクションを増やすとKPIは上がる、けれど事後処理で忙しくなりCSアクションが減りKPIが下がる——この波を数回繰り返してきました。いよいよ外部パートナーで一気に変えるタイミングだと考えました。

ダンドリ戦略開発本部 本部長 石川様

導入の決め手:温かい風土こそ、外部の「物差し」が効く

――SALESCOREを選んだ決め手は何でしたか。

石川様: 当社の風土は空気が温かく、優しいメンバーが多いです。それが強みである一方、「やるべきことをやってください」と強く言いづらい裏返しがあります。新しい業務を増やす摩擦を、社内コミュニケーションだけで処理するのは難しいと感じていました。

SALESCOREは最初の提案段階から、変革で発生するハレーションに踏み込んで語ってくれました。仕組み設計だけなら他社にもありましたが、SALESCOREは設計したものを現場に根づかせるコミュニケーションを、過去事例で当社で起こりうる場面を想像できる粒度で示してくれました。社内でなんとかしようとしても届かない領域です。


設計の中身:3層で「迷いの消し方」を組み立てる

――設計の中心はどこにありましたか。

石川様: CSを「営業活動」ではなく「理想のお客様の状態に導くための活動定義」として組み立て直したことです。設計は3層でできています。フェーズ(理想状態=ロイヤル拠点から逆算)、移行条件(次へ判断する基準)、アクション(具体行動)の3つです。アクションまで落ちているのが、実行が止まらない理由だと思います。

中身効いた場面
① フェーズロイヤル拠点から逆算「今この段階」が共通言語に
② 移行条件各フェーズ完了の判断基準進める/止めるが現場で決まる
③ アクション各フェーズの具体行動「分からない」が消える

――なぜ効いたのだと思いますか。

石川様: 営業未経験者が多く、情報量が多い中で何を選ぶかが難しかったのです。事業者から声が上がるとこちらの道が間違いかと迷う。フェーズ管理が入り「こっちが本質だからこの方向に進もう」と現場で判断できるようになりました。自分たちも携わって設計したものだから、間違っていない道筋だと自信を持ってアクションできます。この迷いの消え方が、数字が動いた一番大きな理由です。

――8年間の経験が組織知になっていなかったということでしょうか。

石川様: 8年やってきてメンバーそれぞれが気づきを得ていたはずなのに、それが全くと言っていいほど組織の知識になっていませんでした。今回、気づきが言語化されつまびらかになり、構造化されました。道筋が「ゲーム化」されています。属人芸化していた領域がようやく「科学」されました。

運用面で火をつけたのが朝会・夕会です。一日の実施事項と振り返りを全員の場で共有します。あるメンバーの訪問の学びが、その日のうちに別のメンバーへ吸収される。気づきが組織の引き出しに残るようになりました。

――時間設定の運用も独自だったと伺いました。

石川様: 受動的な対応が中⼼のときは、時間意識が求められませんでした。能動的アプローチを載せると時間が足りません。各業務に標準時間を設定し、業務開始前にタスクと所要時間を「宣言」する運用を入れました。見積もりと答え合わせを繰り返す中で、時間管理能力が飛躍的に向上しました。パレートの法則じゃないですけれど、20%で8割の仕事を取る意識が入りました。

加えてToDoの可視化です。入力漏れと実施漏れをツールで可視化し、「設定できていないのか/できなかったのか/その理由」までを毎日確認する運用に切り替えました。漏れは徐々になくなりました。

SALESCOREの「会議体外の伴走」

――1on1運用にも変化があったそうですね。

石川様: 当初2週間に1度だったものを週次に変えました。会議体外でもチャットでコミュニケーションを取り、1on1でフォローアップしてくれました。仕組みの設計者が現場に直接応えるから、メンバーが前向きに参加していく流れがつくれました。

――「モデル人材」の育成設計について教えてください。

石川様: 営業未経験者が多く、全員に一斉に「能動的に行ってください」と言っても不安と抵抗が広がるだけです。SALESCOREは2名のモデル人材を選定し、集中育成する方針を取ってくれました。同僚の実践を見て学べる波及効果を狙った戦略です。

――モデル人材の変化を具体的に教えてください。

石川様: モデル人材Aは「迷いがなかった」というのが一番の印象です。忙しい業務の中で自ら訪問・架電の時間を捻出し、フェーズ管理で状況に応じたアクションを判断できるようになりました。学びをチームに自発的に共有します。「一人でやっている」感覚から周囲を巻き込む動きへ。リーダーシップの芽が出てきました。モデル人材Bも事業者側の温度感を捉えるアプローチを重視するようになりました。腰が重たかったメンバーが自分から外に出て、やりがいにつながった、と本人も話しています。


温かい文化を壊さずに水準を引き上げる

――変革で最も効いたポイントはどこでしたか。

石川様: 外部パートナーとしての客観的な「物差し」が入ったことです。

SALESCOREの担当は事業構造に紐づけてロジカルに伝えてくれました。社内からの指摘だと感情的な反発が出るのが、外部のプロからの指摘だからメンバーも腑に落ちて行動を変えられました。社内だけでは絶対にできませんでした。

温かい文化は壊されていません。その温かさの矛先を「お客様の理想状態」に向け直してもらった感覚に近いです。文化と足並みを揃えながら水準を引き上げる——変革の摩擦を最小化するやり方を示してもらえました。マネージャー自身が同じ「物差し」を持てれば社内でも再現できます。次のフェーズはまさにそこです。


3つの壁、3つの打ち手

――変革の負荷も大きかったと伺いました。

石川様: 大きく三つありました。一つ目は「重要度は高いが、緊急度が上がりにくい」という構造です。
二つ目は、CS活動で「どこを見て、何を改善すればいいのか」という判断基準が、マネージャー自身のなかでも定まっていなかったことです。メンバーの動きのどこを評価し、どこをどう変えればより多くの相談につながるのか、その勘所がつかめていませんでした。そのため現場へのフィードバックも表層的なものにとどまりやすく、具体的にどう動きを変えれば成果につながるか示しきれずにいました。
三つ目は、メンバー側で一時的に負荷が高まったことです。従来から担っていた案件対応に加えて、能動的なCS活動が新たに重なり、業務量が膨らみました。とくに設計フェーズの途中は、どの業務にどれだけの容量が必要かを見通しづらく、現場の余力が読みにくい時期でもありました。

――負荷はどう取り除いたのですか。

石川様: 三つの打ち手が効きました。一つ目は1on1での納得形成です。想定外だったのは、反発というより「これだけSALESCOREが一緒にやってくれているのに執行が伴わない。本気でやらないとまずい」という声が現場から自発的に上がってきたことです。「失礼になってしまうからやらせてほしい」という空気が広がりました。

二つ目は業務棚卸しです。SALESCOREの担当が業務を全部棚卸しして余計なものを外し、一部を他メンバーへアサインし直しました。執行を一旦止め、落ち着かせてから戻す進め方で再開しました。

三つ目は組織体制の変更です。一定のメンバーを「外回り専属」に据えました。外に集中できる時間と職務が用意され、アクションが継続実行できる環境が整いました


導入後の変化:相談件数154%・事前審査312%

――成果を数字で教えてください。

石川様: モデル人材A担当法人で1ヶ月の間に、相談件数が前月比154%、事前審査提出数が前月比312%に伸びました。モデル人材Bも相談件数が前月比+11件と大幅な伸びです。モデル人材2名だけでなく、他メンバーの訪問数・架電数も純増しました。能動的アプローチがほぼゼロからのスタートですから、この0→1の伸びがそのまま事業の伸びしろです。

――数字以上の変化はありましたか。

石川様: 営業未経験だったCSメンバーが店舗に出て、「自分たちのサービスがこんなふうに喜ばれているのか」とお客様の声を直接受けられました。

組織の標準行動も底上げされました。履歴を「手間」だと思っていたメンバーも、朝会・夕会で履歴が使われる場面を毎日見て「残さないと仲間に渡せない」と腹落ちしていきました。ハイパフォーマーが他メンバーに自発的にナレッジを渡す場面も増えました。特定の天才の成功ではなく、組織全体のベースラインがシフトしています。「誰でも70点が取れる仕組み」を取れる組織へ——これがiYell様が次に置いた基準です。

今後の展望:「応援し合う地球」を現場で体現する

――次のフェーズはマネージャー育成支援だと伺いました。

石川様: モデル人材の変化が組織に与える影響の大きさを実感しました。次のステップは、この変化をマネジメントが自律的に再現できるようにすることです。マネージャー自身が基準を持ち、組織の水準を自分たちで引き上げ続けられる状態を目指したいです。

――その先の展望をお聞かせください。

石川様: 目指したいのは、アクション数に頼らずに利用し続けていただける「ロイヤル拠点化」です。気に入って使ってくれて、こちらから働きかけなくても自然に相談が寄せられてくる。その拠点が一つ生まれれば、次の店舗に伝播します。

これまでは5人のグループで1人ぐらい優秀な人材が出てくる、けれどその人が異動すると戦力が落ちる、という構造を繰り返してきました。これでは再現性がありません。先ほど触れた「誰でも70点が取れる仕組み」を自分たちに課している基準です。

「眠っている無形資産の活用。事業スケールのための必須の投資」——私はそう捉えています。「CS営業はマニュアル化は困難」と思い込んでいました。でも、CSは定義できる。CSは科学できる。 SALESCOREの力を借りて、設計から運用定着まで半年で実現できました。事実を直視し、構造を変え、人が変わる。この循環を自分たちで回し続けたいです。将来的にはグループ会社への横展開も視野に入れています。

――最後に、描いている未来像を教えてください。

石川様: 「応援し合う地球」の実現です。応援したり応援されたりできる人はどんな人格か、という問いが言語化され、人事評価にも盛り込まれています。チームプレーが好きで、相手の幸せが喜べて、他人が作ったものを否定しない人たちが集まっている組織です。この文化が、お客様に応援し合える関係をつくるベースになります。

これから目指したいのは、iYellのCSが動くたびに、誰かの応援が一つ増えていく組織です。「5人のうち3人が70点」を自分たちに課し、「ロイヤル拠点」を一つずつ増やし、「応援し合う地球」を一件一件の相談で現場が体現していく。SALESCOREさんには、最後のつなぎを現場でつくる仕組みまで一緒に整えていただきました。ここから先は私たち自身の手で育てていく番です。